甲状腺癌の大部分(85〜90%)を占める。低危険度癌と癌死確率の高い高危険度癌に分けられ、大部分(90%)が低危険度癌である。高危険度癌は血行性転移のあるもの、高齢者(男40歳、女50歳を越える者)で原発巣が甲状腺被膜外まで浸潤しているか、5cm以上のものをいう。超音波では形態不整、多角形や不定形を示す。内部エコーは低く、微細あるいは粗大な石灰化像を伴うことが多い。 |
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甲状腺癌の5%以下を占め、微小浸潤癌(被包型濾胞癌)と広範浸潤型濾胞癌に分けられる。微小浸潤癌は、肉眼的および超音波検査では良性結節と区別がつかず、組織学的検索で被膜侵襲がみつかり診断がつく。広範浸潤型濾胞腺癌は、肉眼的に明瞭な浸潤像を示すもの、あるいは組織学的に浸潤が広範囲にみられるもので、血行性転移が50〜80%にみられ、癌死率50%と高い。八頭状の形態を示す場合は、厚い被膜を伴う。 |
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甲状腺が癌の1〜3%以下を占め、C細胞(傍濾胞細胞)由来の癌で、血中のカルシトニンとCEAが上昇する。散在性のものと、家族性の多内分泌腫瘍性MENタイプUに伴うものがある。超音波では形態不整な低エコー腫瘤として描出され、粗大あるいは点状の石灰化像やアミロイド沈着に由来するといわれる高エコーを伴う。 |
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甲状腺癌の2〜5%を占める。急速に週の単位で大きくなり、平均生存は数か月と予後は非常に悪い。多くは乳頭癌、一部濾胞癌から未分化転化する。先行病変を示唆する石灰化や壊死性の変化を認める。 |
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甲状腺悪性腫瘍の5%以下を占める。非ホジキン型B細胞リンパ腫で、ほとんどが橋本病を合併する。超音波では通常、橋本病の所見に加えて、限局した低エコー腫瘤を認める。 |
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臨床的に診断されることは少ないが、剖検例では悪性腫瘍患者の2〜17%に甲状腺転移がみられるといわれる。結節性の病変を示すものと、びまん性の病変を示すものがある。 |
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甲状腺右葉縦断像。境界不整な低エコー結節(矢印)を認める。結節の内部エコーは不均一で、粗大石灰化像を伴っている。 |
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甲状腺左葉横断像。境界不整な低エコー結節(矢印)を認める。小型ではあるが、境界・内部エコーなどは典型像と類似している。 |
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甲状腺左葉横断像。一部充実性、一部嚢胞性の結節(矢印)を認める。隔壁様の構造および充実性の部分に多発する石灰化像がみられる。 |
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甲状腺左葉縦断像。上段と同じ症例。一部充実性、一部嚢胞性の結節(矢印)を認める。充実性の部分は境界が不整で、内部に微細石灰化像が多発してみられる。 |
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甲状腺左葉縦断像。コンベックス型探触子を用いた像。分葉状の大きな低エコー結節がみられる。内部に嚢胞性の変化と粗大石灰化像を伴っている。 |
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甲状腺左葉縦断像。左葉下部に低エコー結節(矢印)を認める。辺縁が一部分葉状で、卵殻状石灰化を伴う厚い被膜エコーがみられる。 |
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甲状腺右葉に、形態が不整で境界が不明瞭な低エコー結節(矢印)が認められる。結節内には石灰化像がみられる。 |
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甲状腺右葉縦断像、石灰化像を伴う形態不整な低エコー結節が認められる。この症例は、一つの結節で右葉のほとんどを占めているが、家族性のものでは甲状腺内に多発することが多い。 |
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甲状腺右葉縦断像。大きな不整形低エコー腫瘤(矢印)の一部が描出されている。内部に輪状の石灰化像がみられ、既存の分化癌と考えられる。 |
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甲状腺右葉縦断像。右葉下部に形態不整な低エコー結節(矢印)を認める。乳頭癌に比べてエコーレベルが低く、発育速度が速い。浸潤性に発育するため周囲の観察も重要である。 |
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甲状腺右葉横断像。未分化癌2と同じ症例。右葉下部に大きく不整な形態の低エコー結節(矢印)を認める。内部に粗大な石灰化像がみられる。 |
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甲状腺横断像。甲状腺左葉から峡部、右葉の一部に拡がる低エコー腫瘤(矢印)を認める。内部に線状高エコーがみられる。残存左葉も大きくエコーレベルが低下しており、橋本病の所見を呈している。 |
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甲状腺右葉横断像。右葉下部に大きな楕円形の充実性結節(矢印)が認められる。急速な増大傾向がみられたため手術が行われた。腎癌の転移であった。 |
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甲状腺左葉縦断像。左葉にはびまん性の腫大とエコーレベルの低下がみられ、橋本病に類似するが、内部に点状高輝度エコーが目立つ。穿刺吸引細胞診で乳癌の転移が確認された。 |
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