Chapter-2 閉塞性動脈硬化症の超音波診断
PSV,PSVR,ATの評価方法  

PSV,PSVR,ATの評価方法


収縮期量大血流速度
(PSV:peak systolic velocity) :
健常例の下肢動脈血流速度は1.0m/s前後であり,2.0m/s以上に上昇することはない.PSVが2.0m/sを超える場合,狭窄疑いと判定する.

  • 内頸動脈

収縮期最大血流速度比
(PSVR:peak systolic velocity ratio):
高度狭窄や閉塞がある場合その末梢側では狭小化している部位でも高速血流は検出されない.その際,狭小化部位とその中枢側でPSVを測定し,両者の比を算出する.有意狭窄例ではPSVRは2.0を超えることが多い.

駆出時間
(AT:acceleration time):
健常例の血流速波形では収縮期の立ち上がりが急峻であり,ATは100ms前後である.この値が120msを超える場合,測定部位より中枢側の狭窄病変が疑われる.

  • 内頸動脈
 
血流波形による評価方法  

血流波形による評価方法


スクリーニング検査
下肢全長を観察するのではなく,鼠径部・膝窩部・足部の3ヶ所を観察し,各部位で血流速波形を記録する.健常例では血流速波形に変化を及ぼすような狭窄病変が存在しなければ,各部位で血流速波形分類のD-1(正常波形)を示す.この波形が大きく変化する場合,測定部位より中枢の観察を行う.D-1とD-2の区別が難しい場合,ATを考慮する.

精密検査

カラードプラガイド下で血管を同定し,血流情報を確認しながら中枢から抹消側へ検査を進め,下肢全長を観察する.パルスドプラ法は必要に応じてその都度,記録する.
 
総大腿動脈の動脈硬化1  

総大腿動脈の動脈硬化1

総大腿動脈後壁側の血管壁が均一に肥厚し,壁表面は平滑である.総大腿動脈から浅大腿動脈に血管内腔の狭小化は認められない.

  • 内頸動脈
 
総大腿動脈の動脈硬化2  

総大腿動脈の動脈硬化2


総大腿動脈後壁側の血管壁が不規則に肥厚している.内膜面のエコー輝度は上昇し,音響陰彰を伴っていることから石灰化病変と考えられる.

  • 内頸動脈
 
浅大腿動脈狭窄1  

浅大腿動脈狭窄1


浅大腿動脈の血管壁は不規則に肥厚し,エコー輝度が上昇している.カラードプラでは血流像がモザイク状であり狭窄が疑われる.

  • 内頸動脈
 
浅大腿動脈狭窄2  

浅大腿動脈狭窄2


パルスドプラ法では狭小化部位にサンプルボリュームを合わせ,角度補正を60度に調整し血流速度を記録した.収縮期最大血流速度(PSV)は3.0m/sあり高度狭窄を示した.

  • 内頸動脈
 
ステント留置術後のステント内狭窄  

ステント留置術後のステント内狭窄


ステント(矢印)は高輝度線状エコー像として観察されている.ステント内部に再狭窄による狭窄血流が検出されている.パルスドプラ法では3.0m/sを超える高速血流が記録された.

 
自家静脈グラフトにおける狭窄  

自家静脈グラフトにおける狭窄


左:断層像では自家静脈グラフト内に静脈弁が観察される.

右:カラードプラ法では静脈弁部で高速血流像が認められ狭窄が疑われる.

  • 内頸動脈
 
深部静脈弁不全の合併  

浅大腿動脈血栓閉塞1


浅大腿動脈は起始部から血栓像が観察されている.この血栓は等輝度,均一なエコー性状を呈している.総大腿動脈から深大腿動脈には血栓像は観察されていない.

  • 内頸動脈
 
浅大腿動脈血栓閉塞1  

浅大腿動脈血栓閉塞2

Directional eFLOWでは総大腿動脈から深大腿動脈の血流像は観察されるが,浅大腿動脈への血流は検出されず完全閉塞である.閉塞例では再開通部位を同定し,閉塞長を計測する.

  • 内頸動脈
 
浅大腿動脈閉塞  

浅大腿動脈閉塞


Directional eFLOWで大腿静脈に血流が検出されるが,その前方にある浅大腿動脈には血流が検出されていない.また,血管径も静脈より小さく見える.

  • 内頸動脈
 
閉塞後の血流波形  

閉塞後の血流波形


パルスドプラ法による膝窩動脈の波形は駆出時間(AT)が延長し,収縮期最大血流速度(PSV)が低下している.これは高度狭窄あるいは閉塞後に多く検出される血流波形である.

  • 内頸動脈
  • 内頸動脈

企画・制作:超音波検査法フォーラム
協賛:富士フイルムメディカル株式会社