整形外科領域の超音波検査への注目度と期待度は年々高まっている。しかし、有用性は高いが、決して万能な検査ではない。上肢と比較して下肢は、肢位の工夫やプローブを持ち替えても描出できない部分や、描出できたとしても病態を的確に評価できない組織が存在する。観察部位は上肢と同様に、股関節、膝関節、足関節などの関節と、筋、腱、神経、血管である。膝関節では、膝関節症の軟骨の厚みや性状、軟骨下骨の状態を直接評価でき、オスグッド・シュラッター病では痛みの原因が滑液包炎か、腱やその周囲の組織の炎症なのか、脛骨粗面部なのかを推測できる。しかし、半月板の損傷をすべて評価することは困難であり、十字靭帯に関しては描出することも難しい。足関節では、前距腓靭帯や前下脛腓靭帯など体表面と並行に走行し、ある程度の厚さと幅を持つ靭帯の描出は可能であるが、二分靭帯など靭帯自体を描出することが難しい場合もある。アキレス腱や肉離れなどは、病態の把握から経過観察まで、超音波検査が有用な部位と言える。いずれにしても、解剖と障害されやすい部位を良く理解して検査に臨むことが重要である。
本CHAPTERでは、大腿〜膝関節の検査手順を紹介する。